
~幸せの国 第1章~
人々から神の使いと呼ばれる鶴が住んでいる森がありました。ある日のこと、鶴のもとへ1人の少女がやってきて尋ねました。
「誰もが幸せになれる国に行きたいのです。どうすればその国にいけますか?」
少女はずいぶん長い旅をしてきたようで、衣服は汚れていました。その姿を見て鶴は言いました。
「あなたの探している国は、この道の先にあります。そこであなたの一番大切なものが見つかるはずです」
少女はお礼を言って歩き出しましたが、その先の道は3つに分かれていました。
少女は迷った末に一番左の道を選び歩いていきました。
たどりついた所は、大きなお城でした。人々は美しい衣装をみにまとい、ダンスを楽しんでいました。
迎え入れられた少女は、ダンスを踊ったり、馬車で出かけたりと夢のような日々をおくり幸せでいっぱいでした。
でも…少女はそれが自分の探していた幸せではないことに気づきました。
その瞬間、少女の体は光に包まれ、気がつくと…もとの分かれ道に立っていました。
次に右の道を行くと、おいしそうな木の実がなっている大きな木があり、
そのそばで多くの人々が木の実を食べながら笑顔で演奏会を聞いていました。
その音楽堂で少女は、同じように「幸せの国」を探す少年と出会い、一緒に手がかりを求めて歩きはじめました。
やがて2人は不思議な雪の世界に迷い込み、そして長い氷の階段に差しかかったとき、
少女の靴が壊れてしまいました。
少年は少女を抱きかかえながら長い階段を登り、ようやく登り切った2人が目にしたのは、
火の鳥に守られた大きな滝でした。
その聖なる水を口にすると、疲れ切った体はたちまち元気になり、
心まで洗われるような心地よさと、まるで天使に包まれているような幸せを感じました。
でも…それも2人の探していた幸せではなかったのです。
再び分かれ道に戻った少女と少年が最後に真ん中の道を選ぶと、光り輝く機関車が迎えにきました。
招かれるように2人が乗り込むと、機関車は空高く舞い上がり、まるで星の草原を駆けているかのようでした。
やがて朝になり、機関車が着いたところは大きな帆船がとまっている港でした。
その長い航海の中で、並んで泳ぐクジラに見守られ2人は「幸せの国」についての想いを語りあいました。
そして少女は、自分の心が変化してきたことに気づき始めていました。
帆船から降りると、突然2人の前に光の道が現れました。
2人は手を取りあってその光の道を進み、やがて目に飛び込んできたのは、
まぶしいばかりに輝く1本の大きなツリーでした。
その輝くツリーを見ているうちに、
少女の瞳からは知らず知らずのうちに涙が流れていました。
「故郷に帰りたい、家族に会いたい…」少女は心の底から思いました。
そのツリーの輝きは、少女にとっての一番大切なもの「幸せの国」が、
彼女の生まれ故郷や家族そのものだったことを初めて気づかせてくれたのです。
少女が自分の気持ちを少年に伝えると、少年は笑顔でうなずきました。
少女は優しいドラゴンに故郷まで送ってもらうことになり、
2人は別れを惜しみながら1年後の再会を約束しました。
少女は自分が大きな幸せに満たされているのを全身で感じていました。
~第2章~に続く…



